死刑廃止の好機到来  中村治郎弁護士

2009年09月24日

私達日弁連の死刑廃止論者は、平成7年3月20日、オウム真理教の起こした地下鉄サ
リン事件以降の被害者保護の波とそれに呼応したマスコミの凶悪事件報道による厳罰主
義の嵐の中で、この14年間、極寒の時代を耐え抜いて来ました。
 その間、私達は、関弁連の「死刑を考える」シンポジウム(アメリカ、フランス等の調
査を含む)、日弁連人権擁護委員会死刑問題調査研究委員会の研究・死刑廃止国(ヨーロッパ)調査、日弁連死刑問題対策連絡協議会の「死刑に関する提言」の作成と理事会の承認、第47回人権大会における「死刑に関する決議」、死刑執行停止等実現委員会の死刑執行停止法案の作成と理事会の承認、日弁連他、25単位会の死刑執行停止を求める会長声明の執行、「死刑を考える日」の全国展開等死刑執行停止ないし死刑廃止を求める活動を継続してきました。
 ところで、正木亮博士(広島高検検事長、2弁会長)は、検事でありながら、ヒューマ
ニズム精神に裏打ちされた教育刑論者の立場から、死刑を「消えゆく野蛮」と呼び、昭和31年(1956年)には、参議院に死刑廃止法案を提出させた経歴を持つている人物です。本来ならば人権擁護を使命とする弁護士は、これに続いて死刑廃止活動を継続すべきであったのに、それから53年も経つにも拘わらず、私達は、死刑執行停止法案も国会に提出できない状況にあります。その間には、1983(昭和58)年から1989(平成元)年にかけて,4つの死刑確定事件(免田・財田川・松山・島田各事件)について再審無罪判決が確定し,死刑判決にも誤判がありうることが明らかになったにも拘わらずです。この状況は,足利事件や飯塚事件と続いているのです。
 今回、私達は、政治主導の政権を選択し、死刑密行主義を堅持し、死刑執行を増やしてきた「法務官僚」から「死刑情報の開示」、「死刑執行の停止と国民的議論の開始」を勝ち取ろうとしております。
 今こそ、国際人権(自由権)規約委員会の総括所見にもあるとおり、世論から決別して、死刑廃止の社会を実現すべき好機が到来しています。その理論的根拠は、死刑は、「生命権」と「個人の尊厳」という基本的人権を侵害し、「人殺し」という正義に反する制度であると言うことです。
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