日本弁護士連合会 第59回人権擁護大会(福井)のご案内 

2016年09月06日

日本弁護士連合会 第59回人権擁護大会(福井)のご案内 

弁護士小川原優之

 

1 はじめに

 日弁連は、高松市で2011年10月7日に開催された第54回人権擁護大会において、死刑のない社会が望ましいことを見据えて、「罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言」(以下、高松宣言といいます)を採択しました。

 高松宣言を実現するために,日弁連は,全国の弁護士会からの参加を得て,弁護士100人規模の「死刑廃止検討委員会」を設置し,法務大臣に対する死刑執行停止要請活動,国会議員・法務省幹部・イギリス大使等のEU関係者(EUは日本に対し死刑廃止・死刑執行停止を求めています。)・マスコミ関係者・宗教界との意見交換,海外調査(韓国,米国テキサス州・カリフォルニア州・イリノイ州,イギリス、スペインの死刑及び終身刑等の代替刑の調査),政府の世論調査に対する日弁連意見書の公表,死刑廃止について考えるためのシンポジウムの開催,市民向けパンフレットの発行等の活動を重ねてきました。

 私は、日弁連死刑廃止検討委員会の事務局長をしており、日弁連の活動を紹介したいと思いますが、意見にわたる部分は私見です。

 

2 犯罪被害者の支援と死刑制度の廃止は人権を尊重する民主主義社会の課題です

  高松宣言は、人権を尊重する民主主義社会にとって、犯罪被害者・遺族の支援と死刑のない社会への取組は、いずれも重要な課題であると述べています。

 犯罪被害者等基本法の定めるように、悲惨な犯罪被害者・遺族のための施策は,犯罪被害者・遺族が,被害を受けたときから,必要な支援を途切れることなく受けることができるようなものでなければならず,その支援は,社会全体の責務です。犯罪により命が奪われた場合,失われた命は二度と戻ってこず、このような犯罪は決して許されるものではありません。遺族が厳罰を望むことは,ごく自然なことです。

 他方、生まれながらの犯罪者はおらず,犯罪者となってしまった人の多くは,家庭,経済,教育,地域等における様々な環境や差別が一因となって犯罪に至っています。そして適切な働き掛けと本人の気付きにより,罪を悔い,変わり得る存在です。

 高松宣言は,死刑が,かけがえのない生命を奪う非人道的な刑罰であることに加え,罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,更生し社会復帰する可能性を完全に奪うという問題点を内包していることや,裁判は常に誤判の危険をはらんでおり,死刑判決が誤判であった場合にこれが執行されてしまうと取り返しがつかないこと等を理由として,死刑のない社会が望ましいことを見据え,死刑廃止についての全社会的議論を直ちに開始することを呼び掛ける必要があるとしています。

 

3 考え悩む世論とともに 

 2014年に実施された政府の世論調査の内容は、日弁連意見書を考慮したものとなりました。「死刑もやむを得ない」という回答が80.3%となりましたが,そのうち「状況が変われば廃止」が40.5%であり,また「終身刑導入なら廃止」も全回答者の37.7%にのぼっています。

 イギリスレディング大学佐藤舞講師の世論調査についての研究によれば、日本で死刑の存置を支持する人の71%は,政府が死刑廃止を決定すれば,これを受け入れると回答しています。

 このように死刑についての情報が十分に与えられ,終身刑などの死刑の代替刑についても議論すれば,死刑廃止が必ずしも国民世論の少数になるとは限らない状況となってきています。

 世論も考え悩んでいるのです。

 

4 死刑に代わる刑罰を検討する必要があります

 死刑を廃止するに際して,死刑が科されてきたような凶悪犯罪に対する代替刑を検討する必要があります。代替刑としては,刑の言渡し時には「仮釈放の可能性がない終身刑制度」や、あるいは現行の無期刑が仮釈放の開始時期を10年としている要件を加重し,仮釈放の開始期間を20年,25年等に延ばす「重無期刑制度」の導入を検討することが考えられます。

 ただし,「仮釈放のない終身刑制度」を導入する場合も,長い時間の経過によって本人の更生が進んだときには,見直しをする制度設計が必要だと思います。時間が経過しても更正が進まない場合には、そのまま拘禁せざるを得ませんが、長期間の収容後、更生が明らかな場合には、裁判所等の新たな判断による「無期刑への減刑」や恩赦等の適用による「刑の変更」を可能とする制度設計が検討されるべきです。

 

5 2020年までに死刑制度の廃止を目指す

(1)前述したように2014年の世論調査の結果によれば、死刑についての情報が十分に与えられ,終身刑などの死刑の代替刑についても議論すれば,死刑廃止が必ずしも国民世論の少数になるとは限らない状況となってきています。

 また、政府与党内でも、死刑制度のあり方も含め、刑罰制度改革の議論が開始されています。

(2)そして2020年には、日本で、国連犯罪防止刑事司法会議と東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。

 国連犯罪防止刑事司法会議は,各国から数千人の政府関係者と専門家・NGOが集い,世界の刑事司法の向かうべき方向性を議論する大規模な国際会議です。

 またオリンピックは、憲章によれば、その目的は、「人間の尊厳を保つことに重きを置く平和な社会の確立を奨励すること」とされています。

 ところが開催国である日本では、名張事件、袴田事件、東住吉事件など多くの冤罪事件が発生しており、死刑制度が維持され執行が繰り返されています。日本政府にとっても、2020年までに、刑罰制度を改革することが課題となっているのです。

(3)このようななか日弁連では、高松宣言を更に一歩進めるため、今年2016年に福井県で開催される第59回人権擁護大会において、10月6日に、シンポジウム「死刑廃止と拘禁刑の改革を考える~寛容と共生の社会をめざして~」を開催します。

  このシンポジウムには、世界的に著名な死刑廃止の研究者ウイリアム・シャバス博士や袴田事件の袴田巌氏のお姉さんの袴田秀子氏も参加し、瀬戸内寂聴氏からもメッセージをいただく予定です。米国の死刑廃止の現状や終身刑については笹倉香奈教授に講演していただき、日弁連のイギリス調査やスペイン調査の結果についても報告します。死刑存置から死刑廃止へと考えの変わった元法務省幹部のお話しや、政府与党の国会議員、現職の法務省幹部のお話しもお聞きします。

 そして翌10月7日には、前日のシンポジウムの成果をふまえ、全国から多くの弁護士の参加する大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言案」について審議する予定となっています。

 

6 結語

 2020年までに本当に日本での死刑制度の廃止を目指すには、今よりもはるかに多くの方の理解と協力が必要です。

 日弁連の福井でのシンポジウムは、そのための一歩に過ぎません。死刑廃止論者だけでなく、悩み考える多くの市民に理解してもらえ、協力してもらえるような活動を、みんなで連携しあいながら進める必要があります。是非、多くの方がシンポジウムにご参加くださるようお願いします。   

                                      以上


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