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死刑ってどういうもの?
悪いことをした人がなるものですよね?
新聞とかで読んだことはあるけど、詳しいことはよくわからないんです。
そうだね。普段の生活の中ではなかなか考える機会がないお話だね。

みんなは死刑についてどんなことを知ってる?
うーんと。
映画とかで見ると、電気が流れるイスに座ったりとか首を吊ったりとか…。ブルブル。
日本での死刑はね、
殺人事件などをおかした人が逮捕されて裁判を受けて、裁判官から死刑判決が言い渡された後、
法務大臣の命令で、拘置所のなかにある死刑場で絞首刑(首吊り)になるんだ。
ええっ!?首吊りになるのっ!?
死刑について考えるなんてなんだか怖いし難しそうだよー!
でも死刑について考えることは、とっても大事なことなんだよ。

今日は一緒にみんなで考えてみよう。
 日本では死刑は、「刑事施設内において、絞首して執行する。」、 「死刑の言渡しを受けた者は、その執行に至るまで刑事施設に拘置する。」(刑法11条)こととなっており、 死刑の執行がなされるまでの間は、「死刑確定者の処遇に当たっては、 その者が心情の安定を得られるようにすることに留意するものとする。」(刑事収容施設法32条)とされています。

 事件を起こし、捜査段階で起訴されるまでの間を被疑者といい、 起訴された後の裁判を受けている公判の間を被告人といい、裁判が終わって死刑が確定した後を死刑確定者といいます。

 死刑確定者は、拘置所内において、通常は、他の死刑確定者との交流もなく、 また外部との交流も限られた数人との間を除いては断たれて、昼夜独居の生活を送っています。
 独房の中では、本を読んだり、絵を描いたりして一日を過ごしていますが、ある朝、突然、その日に死刑が執行されることを告げられることになります。

日本国憲法36条は、「残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と定めていますが、平成23年10月31日に大阪地裁で死刑判決が言い渡されたパチンコ店放火殺人事件の審理において、自らも死刑の求刑及び死刑執行への立会いの経験を有する土本武司元最高検検事が「受刑者に不必要な肉体的、精神的苦痛を与える」もので憲法36条が絶対に禁止する残虐な刑罰に「限りなく近い」と証言しています。また、この判決は、「絞首刑には、前近代的なところがあり、死亡するまでの経過において予測不可能な点がある」として、その問題点を指摘しています。

★日弁連「死刑を考える」ホームページ

「死刑場はどのようなところですか−イラストで見る刑場」
http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q05.html

「死刑はどのように執行されるのですか−死刑執行の実際」
http://www.nichibenren.or.jp/activity/criminal/deathpenalty/q06.html
 ★コラム 映画「休暇」をみたことはありますか

 映画「休暇」(原作:吉村昭、監督:門井肇、出演:小林薫、西島秀俊)の主人公である金田は、 映画からでは分かりませんが、原作である吉村昭の小説によれば、「老人夫婦を殺傷し金品を強奪して捕らえられた27歳」の死刑確定者です。

 「休暇」では、死刑確定者である金田(西島秀俊が演じているのですが、 あまりに立派で正直なところ、こんな死刑確定者いるのかなあという感想を抱いたのですが、 原作でも「立派な容貌と体格」をしており、おそらくキリスト教の教戒師との交流のなかで 「クリスチャンとして精神的に安定した境地に達していた」人物として描かれています) の日常生活の様子(独房の中で、刑務官以外との交流はほとんどなく、絵を描いて毎日を過ごしています)や、 死刑執行までの流れ(法務大臣が死刑の執行に必要な書類に押印し、執行の日が決まり、書類が拘置所に届き、 刑務官の中から死刑執行に立ち会う人選と役割の分担が決まり、執行当日の朝、金田が独房から連れ出され、 執行される状況が淡々と描かれています)、 刑務官の苦悩(映画の中では、死刑執行に立ち会う刑務官の中で最も敬遠される役割が吊された死刑確定者の体を下で支える「支え役」であり、 務めた者には1週間の「特別休暇」が与えられることとなっています。
小林薫演じる刑務官の平井は、結婚相手と旅行をするための休暇が欲しいことから「支え役」を志願するのです)などが描かれています。

 とくに執行当日の朝、いつものように絵を描いている金田の独房に、刑務官の足音が近づいてきます。
近づいてくる足音が響き、それがやがて自分の房の前で止まります、 その時の金田の驚きと恐怖にかられた表情を俳優の西島は、抑えた演技でうまく表現しています。

 日本では、これまで4件の死刑確定者について、冤罪であることが判明し、再審の結果無罪となっているのですが、 生還した死刑確定者は、毎朝の刑務官の足音が近づくときの恐怖と、自房の前を通り過ぎるときの「助かった」という安堵感を生々しく語っています。

 ただ首に縄がかけられ、床板が開き、吊るされた状態の死刑確定者の実際の様子は、映画よりもっと残虐なものです。
 実際に死刑の執行をした刑務官の書いた本や話では、吊るされた死刑確定者が絶命するまでの間には、 数分間以上を要し、その間、刑務官は絶命するまでずっと見ていなければなりません。
勿論、死刑確定者の体は相当に揺れ動くでしょうし、体液なども体から出てくるでしょう。
それを数分間以上、ずっと見ていなければならないそうですが、その様子はあまりにも残虐だからか原作にも映画にも描かれていません。

 また「特別休暇」があることは、もしかすると作家の創作なのかもしれません。
しかしたとえ創作であったとしても、吉村昭という作家の力量、門井肇監督のテーマについての強い思い、 俳優の演技力は、現実の死刑という制度の残虐性とそれに関わる人々の苦悩を見事に描き出しているのです。