連続リンチ殺人事件最高裁判決(少年事件・死刑)と実名報道に関する日弁連会長声明

2011年03月11日

連続リンチ殺人事件最高裁判決(少年事件・死刑)と実名報道に関する日弁連会長声明

 大阪、愛知、岐阜の3府県で1994年、男性4人が殺害された連続リンチ殺人事件で、強盗殺人などの罪に問われ、二審でいずれも死刑判決を受けた犯行当時18~19歳の被告人3人の上告審判決が3月10日、最高裁第1小法廷であり、被告人側の上告を棄却し、3人の死刑が確定しました。また一部の報道機関は、被告人の実名を報道しました。
 これに関し、日弁連は、3月10日、二つの会長声明を出しましたので、ご紹介します。

1 少年に対する死刑判決の確定に関する会長声明

1994年(平成6年)秋、大阪、愛知、岐阜の3府県で少年らのグループによって計4人の若者を死亡させた、いわゆる連続リンチ殺傷事件の被告人ら3人の死刑判決に対する上告が、本日最高裁判所において棄却された。

1983年(昭和58年)7月8日のいわゆる永山最高裁判決以降、犯行当時少年に対する死刑判決が確定しているのは2人だけであるところ、本日の上告棄却により、犯行当時少年であった被告人ら3人に対する死刑判決が確定することになる。

死刑については、死刑廃止条約が1989年12月15日の国連総会で採択され(1991年発効)、1997年4月以降、国連人権委員会(2006年国連人権理事会に改組)は「死刑廃止に関する決議」を行い、その決議の中で日本などの死刑存置国に対して「死刑に直面する者に対する権利保障を遵守するとともに、死刑の完全な廃止を視野に入れ、死刑執行の停止を考慮するよう求める」旨の呼びかけを行った。また、2008年10月には国際人権(自由権)規約委員会は、日本政府に対し、「政府は、世論調査の結果に拘わらず死刑廃止を前向きに検討し、必要に応じて国民に対し死刑廃止が望ましいことを知らせるべきである。」との勧告をしている。

また、死刑廃止国は着実に増加し、1990年当時、死刑存置国96か国、死刑廃止国80か国(法律で廃止している国と過去10年以上執行していない事実上の廃止国を含む。)であったのに対し、現在は、死刑存置国58か国、死刑廃止国139か国(前同)となっており、死刑廃止が国際的な潮流となっていることは明らかである。

加えて、1994年に我が国で発効した「子どもの権利条約」で引用されている少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)では「少年とは各自の法律制度の下において、犯罪について成人とは違った仕方で取り扱われている児童又は若者をいう」と規定され、「死刑は少年が行ったいかなる犯罪についても科してはならない」と規定しているところである。

このような状況の下で、最高裁判所が犯行時少年であった被告人3人に対し、少年事件の特性に何ら考慮を払うこともなく、死刑判決を確定させることは誠に遺憾であるといわねばならない。

当連合会は、2002年11月に「死刑制度問題に関する提言」を発表し、死刑制度の存廃につき国民的議論を尽くし、また死刑制度に関する改善を行うまでの一定期間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)の制定を提唱し、政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを求めているところである。本判決を契機として、改めて、政府に対し、死刑執行停止法の早期制定と死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを求めるものである。
2011年(平成23年)3月10日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/110310_2.html


2 少年の実名報道を受けての会長声明
本日、最高裁判所が、いわゆる連続リンチ殺傷事件について、犯行時少年であった3人の被告人に対して死刑判決を言い渡したことを受けて、一部の報道機関は被告人らの実名を報道した。

これは、少年時の犯行について氏名、年齢等、本人と推知することができるような記事又は写真の報道を禁止した少年法61条に反する事態であって、極めて遺憾である。

凶悪重大な少年事件の背景には家庭での虐待等の不適切養育や学校・地域などをめぐる複雑な要因が存在し、少年個人のみの責任に帰する厳罰主義は妥当ではなく、少年の成長支援が保障されるべきであることから、少年法1条は「健全育成」の理念を掲げ、同法61条は、この理念に基づき、少年の更生・社会復帰を阻害することになる実名報道を、事件の重大性等に関わりなく一律に禁止している。

国際的に見ても、子どもの権利条約40条2項は、刑法を犯したとされる子どもに対する手続の全ての段階における子どものプライバシーの尊重を保障し、少年司法運営に関する国連最低基準規則(いわゆる北京ルールズ)8条も、少年のプライバシーの権利は、あらゆる段階で尊重されなければならず、原則として少年の特定に結びつきうるいかなる情報も公表してはならないとしている。

そして、上記の理念は、少年が成年に達したり、死刑判決が言い渡されたりしても変わるものではない。また、死刑判決が確定した場合には少年の成長発達は問題にならないとする見解もあるが、再審や恩赦制度があることから、少年が社会に復帰する可能性は残っている。さらに、少年法61条の精神は、憲法13条から導かれるものであり、少年の個人としての尊厳及び幸福追求権は、少年に死刑が確定した後も失われるものではない(当連合会2007年11月21日付け「少年事件の実名・顔写真報道に関する意見書」参照)。

もとより、憲法21条が保障する表現の自由の重要性は改めて言うまでもないが、私人である少年の実名が、報道に不可欠な要素とはいえない。事件の背景・要因を報道することこそ、同種事件の再発を防止するために不可欠なことであり、むしろ実名を報道することで、模倣による少年非行を助長する危険性もある。

当連合会は、報道機関に対し、今後、同様の実名報道、写真掲載等がなされることがないよう、強く要望する。
2011年(平成23年)3月10日

日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/110310.html


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