共同通信 【死刑容認の世論に変化か】終身刑導入なら存廃接近  内閣府の世論調査

2015年04月01日

共同通信 【死刑容認の世論に変化か】終身刑導入なら存廃接近  内閣府の世論調査 


 内閣府が1月に公表した死刑制度に関する世論調査結果が、司法関係者らの間で注目されている。死刑を容認する回答が8割超の超の高水準を維持する一方で、終身刑を導入した場合の回答では死刑の賛否が接近したためだ。法務当局は死刑存置の姿勢を崩していないが、死刑に批判的な弁護士や市民団体などからは「将来的な死刑廃止につながる結果」との見方も出ている。
 調査は5年に1回行われ、今回は昨年11月、全国の20歳以上の男女3千人を対象に面接で実施。有効回答は1826人(60・9%)だった。
 死刑制度の是非は①死刑は廃止すべきだ②死刑もやむを得ない③分からない―の3択で質問。「やむを得ない」が80・3%で、2009年に実施した前回調査の「場合によってはやむを得ない」との回答から5・3ポイント減った。一方で「廃止すべきだ」は9・7%。前回調査の「どんな場合でも廃止すべきだ」との回答から4・0ポイント増えた。
 日本にはない「仮釈放のない終身刑」を導入した場合の死刑存廃を初めて質問。「廃止する方がよい」との回答は全体の37・7%に達し、社会から生涯隔離する刑が導入されれば、死刑廃止支持が増えることを示した。
 さらに、死刑を「やむを得ない」と回答した人の中で「状況が変われば廃止してもよい」とした人が4割を超えた。
 調査結果について、衆院議員時代に超党派の「死刑廃止を推進する議員連盟」事務局長を務めた東京都世田谷区の 保坂展人 (ほさか・のぶと) 区長は「死刑支持の世論が『盤石』ではないことを示した」とみる。
 保坂氏は、昨年3月に再審開始が決定した「袴田事件」によって「誤判による死刑執行の可能性があらためて示された」と指摘。終身刑を導入することで「死刑存廃の議論に一石を投じ、8割が死刑容認の世論を変える潮目になる」と話す。
 これに対し、元参院議員の 佐々木知子 (ささき・ともこ) 弁護士は「人の命を奪えば、その因果が自分に返ってくるのは当然。国家には、被害者の報復感情を満足させる義務がある」と死刑制度の必要性を強調する。
 国際的には死刑廃止が主流になっているが、佐々木弁護士は「(廃止国でも)現場で警察官が容疑者を射殺しており、単純な比較はできない」とし、終身刑の導入にも「脱走しようと刑務官を殺傷しても、それ以上の刑罰を受けることがなくなる」と批判的だ。法務省も「処遇が困難になる」(幹部)など終身刑には否定的な立場を取る。
 同省によると、04~13年に49人の無期懲役の受刑者が新規に仮釈放されたが、 平均収容期間は04年の25年10カ月から13年は31年2カ月と長期化。 この10年間で、無期受刑者の146人が死亡しており、実質的に終身刑化しているとの指摘もある。
 上川陽子法相は1月の閣議後の会見で、終身刑について「社会復帰の望みがなく、受刑者に絶望感を抱かせる大変過酷な刑罰であるなどの指摘がある」とし、導入には「国民の間で幅広い議論が行われていくことが望ましい」と語った。
 死刑廃止を求める側にも「終身刑は残虐」との意見が根強いが、廃止派として知られる明治大の 菊田幸一 (きくた・こういち) 名誉教授は言う。「現状の世論からみて、 死刑をなくしていくためには 終身刑導入しかない。廃止派も現実的な議論をすべきだ」(共同通信記者 佐藤大介)

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